ポストイナ ~Postojna~
国土の半分ほどがカルスト台地で覆われているスロベニアには洞窟が大小合わせて一万個以上存在し、世界で初めて洞窟観光を始めた国だそうです。ポストイナにはスロベニアで一番大きな洞窟であるポストイナ鍾乳洞があります。 そして他ではまず見られない洞窟城もあります。オフシーズンの個人旅行ではちょっとアクセスが悪かったので、現地ツアーを利用して訪問しました。
洞窟城(プレドヤムスキ城)~Predjamski grad~

プレドヤムスキ城はポストイナ鍾乳洞から9キロメートルほどの場所にある、断崖絶壁に包み込まれるように建つなんとも不思議な城です。ヨーロッパで現存している唯一の洞窟城です。カタカナ表記がちょっと怪しいので、この先は洞窟城と記します。


洞窟城は十二世紀ごろに神聖ローマ帝国の砦として建設され、16世紀にオーストリアが支配した時代に現在の形になったそうです。400年かけて増築されていて、入り口はルネッサンス時代のものです。谷底から56メートルに城の土台部分があり、背後の岩壁の高さは123メートル、岩山の上から見下ろしても城は全く見えないそうです。


城を構成する壁には、漆喰の壁と天然の岩を利用した壁の二種類があります。ちなみに城の外にはのどかな田園風景が広がっています。


ありがちですが、城の内部は再建築後の当時の生活を再現した博物館のようになっています。

背後を完全に岩壁に守られ、かつ昔は下からの一本道しかなかった洞窟城はまさに難攻不落であり、長期間の籠城が可能だったそうです。それに加えて、緊急時に裏から行き来できる秘密の隠し通路があります。隠し通路は13キロメートル以上もあり、その一部は夏季のみガイドツアーで見学できます。
今回は現地ツアーを利用して訪れた洞窟城でしたが、夏季であればポストイナ鍾乳洞とのシャトルバスが出ているようなので、個人旅行でも訪れやすくなると思います。
ポストイナ鍾乳洞 ~Postojnska Jama~

ポストイナ鍾乳洞はスロベニアどころかヨーロッパで一番大きく、世界でも三番目の規模を誇る鍾乳洞です。


十六世紀に発見された鍾乳洞で、その全長は21キロメートルもあり、観光できるのは全体の約5分の1程度だそうです。洞窟内の温度は8~10℃程度と、年間を通してほぼ一定です。


まずはトロッコ列車に乗って、3.2キロメートルの線路を進みます。トロッコ列車は昔の遊園地の乗り物風な、あまり安全設計を考えてないような作りです。それがかなりのスピード(時速11キロらしい)で走っていくので、けっこうなスリルを味わえます。そして寒いです。天井が低い場所もあるので、立ち上がりでもしたらきっと大怪我するので要注意です。


洞窟内はフラッシュを焚かなければ写真撮影OKだと言われました。照明が当たると苔が成長してしまうので、フラッシュ禁止はもちろんライティングにも非常に気を使っているようです。


洞窟内には茶色っぽいものから白っぽいものまで、色々な形の鍾乳石や石筍が立ち並んでいます。茶色っぽいものには鉄分が多いそうです。鍾乳石が1ミリメートル成長するのに、十~三十年の年月がかかるらしいです。


上から下に成長する鍾乳石は中が空洞で、下から上に成長する石筍は中まで詰まっています。上下から合体するとこんな感じで石柱になります。

中には名前の付けられた鍾乳石や石筍もあります。これは『ザ・ジャイアント』。見事に白い柱状で、高さは7メートルほどあります。

『カーテン』と名付けられた鍾乳石群。この写真はまぁアレですが、もっと大きなカーテンっぽいのもありました。

『スパゲッティホール』。二万本のもの鍾乳石が天井から連なっています。直径は約5ミリメートル、中は空洞でガラスのようです。

左が『ゴシックの柱』、右が『ブリリアント』。ゴシックの柱は森を流れ落ちてきた水から、ブリリアントは石灰岩を通って落ちてきた水から成長しています。隣り合って立っていますが、それぞれの水源の場所は2キロメートルも離れています。

ルート終わりにある『コンサートホール』。写真だと広さが実感できませんが、その名の通りコンサートなどのイベントが行われます。洞窟内だけに音響効果はバツグンです。

洞窟内にはホライモリという両生類が生息しています。暗闇に適応しているために視力は退化し、一年くらいならば何も食べなくても生きられるそうです。実物は見ませんでしたが、とりあえず可愛い?オブジェ。
これほどの洞窟でありながら、ポストイナ鍾乳洞は世界遺産に登録されていません。前述のトロッコ列車が自然な状態から遠ざけてしまったことが理由のようです。観光客の立場からだと、世界遺産になっても『オーバーツーリズム』『入場料が上がる』『現地の人が浮かれ過ぎる』などデメリットも多くなるので、個人的にはコレで良いんじゃないかと思います。